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PRO倫理指針

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共同代表理事の山口です。

先日のFBでも紹介しましたが、
Ethical Considerations for the Inclusion of Patient-Reported Outcomes in Clinical Research
The #PRO Ethics Guidelines
が公開されました。本邦からは、宮路天平先生がご参加されています。

https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2792247

本指針(ガイドライン)は、PRO臨床研究で取り組むべき倫理的な問題についての提言を示しています。PRO臨床研究の倫理的問題に対処することは、参加者のリスク、負担、害を最小限に抑え、研究参加者と研究者の福祉を保護しながら、高品質のPROデータを確保するポテンシャルを秘めています。

このPRO倫理指針の目的は、以下の通りです。
・研究資源から得られる有益な効果を最大化する
・参加者の自律性を促進し保護する
・参加者の研究福祉の保護
・アクセス可能な研究の促進
・参加者の負担と害を最小限にする
・参加者のリスクを最小限に抑える
・質の高い研究の推進
・PRO研究を普及させる

以下、論文に沿って、概要を紹介させていただきます。

キーポイントは、

疑問点:患者報告アウトカム (PRO) を測定する臨床研究を実施または審査する際に、研究者、研究倫理委員会、資金提供者が考慮すべき倫理的配慮は何か。

得られた知見:ヘルスリサーチの質と透明性の向上を目的としたEQUATOR (Enhancing the Quality and Transparency of Health Research) の方法論に従って、デルファイ法(対象のテーマや設問について研究者に個別に回答してもらい、得られた結果をフィードバックして他の研究者の意見を確認した後、再度同じテーマについて回答してもらう。この過程を何度か繰り返すことにより、ある程度収束した組織的な見解を得ることを目指す方式。)を用いて国際的なコンセンサスを得た、倫理的配慮に対処する14項目がPRO倫理ガイドラインに含まれるよう推奨された。

結果の意味するところ:PRO倫理指針の項目に取り組むことで、参加者の自律性を促進・保護し、参加者と研究者の福祉を守りながら、臨床研究におけるPROの質を向上させる可能性を持っている。

論文の概要は、以下の通りです。

重要な背景:患者から報告された結果 (PRO) は、医療に関する意思決定、規制に関する意思決定、医療政策に情報を提供することができる。また、監査・ベンチマークや症状のモニタリングにも利用でき、個人のニーズに合わせたケアをタイムリーに提供することができる。しかし、PROの使用に関しては、いくつかの倫理的問題が指摘されている。

研究目的:国際的なコンセンサスに基づく、PROに特化した臨床研究倫理指針を作成する。

エビデンスのレビュー:PRO 倫理ガイドラインは、EQUATORネットワークのガイドライン開発の枠組みに従って作成された。これには、臨床研究におけるPROの倫理的意味合いの系統的レビューが含まれる。MEDLINE (Ovid)、Embase、AMED、CINAHLの各データベースを、開始時から2020年3月まで検索した。データベースの検索には、patient reported outcome*とethic*のキーワードを使用した。2名の査読者が,全文スクリーニングの前にタイトルおよび抄録のスクリーニングを独立して実施し,適格性を判断した。審査は、SPIRIT-PRO Extension(臨床試験実施プロトコル(計画書)に患者報告アウトカムを組み込むためのガイドライン)の試験プロトコルの推奨事項によって補足された。その後、2ラウンドの国際デルファイプロセス(n=96名;2021年5月、8月)およびコンセンサス会議(n=25名;2021年10月)が開催された。投票に先立ち、コンセンサス会議参加者には、デルファイプロセスの結果概要と、項目が既存の倫理指針に合致しているかどうかの情報が提供された。

結果:デルファイプロセスの第1ラウンドでは23項目が検討された。システマティックレビューから得られた6つの候補項目と、SPIRIT-PRO Extensionから得られた17の追加項目である。96人の国際的な参加者が、倫理指針に含めるための各項目の重要性について投票し、12項目が第2ラウンドのデルファイに含めるよう推奨された(合計35項目)。コンセンサス会議では、14項目が推奨された(n=25人)。PRO倫理指針の最終的な文言は、コンセンサス会議の参加者が合意し、さらに6名の意見を加えた。含まれる項目は、研究を実施する妥当性 (rationale)、目的、参加者の適格規準、使用するPROの概念と領域、PRO評価スケジュール、サンプルサイズ、PROデータのモニタリング、PROをすべて測定することへの障害、参加者の受け入れ可能性と負担、PROデータを自己申告できない参加者のPRO質問票の管理、患者パートナーや一般人によるPRO戦略への意見、データの欠損回避、PROの普及計画に関するPRO特有の倫理問題に焦点を当てたものであった。

結論と意義:PRO倫理指針は、PRO臨床研究で取り組むべき倫理的な問題についての勧告を提供している。PRO臨床研究の倫理的問題に対処することは、参加者のリスク、負担、害を最小限に抑え、参加者と研究者の福祉を保護しながら、高品質のPROデータを確保する可能性がある。

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