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PROに関するESMOのガイドライン

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共同代表理事の山口です。
  
先週のFBでも紹介しましたが、
ESMO(European Society for Medical Oncology、欧州臨床腫瘍学会)から
CLINICAL PRACTICE GUIDELINE – THE ROLE OF PATIENT-REPORTED OUTCOME MEASURES IN THE CONTINUUM OF CANCER CLINICAL CARE
というガイドラインが発出されました。
  
https://www.esmo.org/guidelines/supportive-and-palliative-care/patient-reported-outcome-measures
  
このガイドラインでは、がん患者のケアにおけるPROの役割について重要な提言がなされており、がん患者の治療開始時から、フォローアップ時、終末期までにおけるPROの使用に言及しています。
エビデンスレベルにもとづいて、いくつかの推奨事項が挙げられています。
  
※エビデンスレベルについては、以下をご参照ください。
https://www.esmo.org/content/download/77789/1426712/file/ESMO-Clinical-Practice-Guidelines-Standard-Operating-Procedures.pdf
  
  
<積極的ながん治療を受けている患者さんのPROの使用について>

・コミュニケーション、満足度、治療アドヒアランス、症状コントロール、QoL、救急室や病院への入院、生存に効果があるというエビデンスに基づき、がん治療中の日常診療におけるPROによるデジタルでの症状モニタリングが推奨される(エビデンスレベル 1A)。

・以下の主要な機能を持つePROシステムまたはデバイスの使用が推奨される。ウェブや携帯端末等でPROが使用できること、先行研究から得られた一般的な横断的PROの質問が含まれていること(例:痛み、吐き気、便秘、 下痢、呼吸困難、不眠、身体機能)、電子メールによる患者の自己報告の催促とリマインダー機能、先行研究に基づくバリデートされた症状尺度の使用、重度の症状や悪化した症状に対する臨床医への自動アラートなどである(エビデンスレベル 1A)。

・これらの機能を備えた学術的・商業的なシステムが複数あることを考慮し、ランダム化試験において有益であるという有力なエビデンスが得られているシステムSTAR、PRO-TECT、有害事象の電子患者自己報告(eRAPID)(エビデンスレベル 1A)、他のシステム(エビデンスレベル 1B)などの使用を推奨する。
  
  
<日常臨床におけるPRO>

・臨床ケアにおいて評価されるPROは、対象集団において意味があり、臨床的に対処可能でなければならない(エビデンスレベル 1A)。

・PROの質問票や項目は、妥当性、信頼性、変化への反応性など、測定特性が実証されている必要がある(エビデンスレベル 1A)。

・共通の症状からなる横断的な「コアセット」と、オプションとしてがん種や他の変数に基づく追加項目によるモジュール方式を採用し、患者集団全体に同じPRO尺度を用いることが提案されている(エビデンスレベル 5B)。

・患者の負担を避け、患者の参加を確実にするために、項目数を制限することが提案されている(エビデンスレベル 5B)。

・実行可能な場合は、脆弱な人々が調査プラットフォームを使用できるように、複数の使用方法を提供すべきである(エビデンスレベル 5B)。
  
  
<PROデータおよびリモートモニタリングのアラートへの対応>

・PROを日常的に収集している施設の臨床担当者は、PROデータのレビューと解釈に関する研修を受けるべきである(エビデンスレベル 1A)。

・医療機関及び臨床チームは、PROデータのレビューとそれに基づくアクションを確実に行うために、職員の役割と責任を明確にし、ワークフローを再設計するべきである(エビデンスレベル 1A)。

・適切な訓練を受けたがん専門看護師やその他の医療従事者(例えば、ソーシャルワーカー)は、PRO アラートの最初の対応者となるべきである(エビデンスレベル 1A)。
  
  
<再発や治療関連副作用のリスクが高い患者さんにおける治療後のPROの使用について>

・初回治療または維持療法を終了したステージIIIB/IVの肺がん患者には、PROによる症状のモニタリングが推奨される(エビデンスレベル 2B)。

・痛み、疲労、睡眠障害、苦痛、うつ病、性的面、認知障害などの持続的または新たな症状を管理するためのPROを用いた症状モニタリングは、がん患者の治療後に有用である(エビデンスレベル 5C)。
  
  
<終末期におけるPROの使用>

・終末期のがん患者において、PROを用いた症状モニタリングの使用を検討し、症状コントロールを支援することが必要である(エビデンスレベル 3C)。
  
  
<フォローアップとサバイバーシップにおけるPROの使用>

・がん治療後の患者のサバイバーシップケアにおいて、コミュニケーションを改善し、支持療法を必要とする晩期障害、症状、機能障害を特定するために、PROの使用を検討する必要がある(エビデンスレベル 5C)。
  
  
<ヘルスケアシステムにおけるベストプラクティスとPROの導入>

・PROの使用には、施設スタッフとの連携、体系的なトレーニング、継続的なモニタリングと監視が必要である(エビデンスレベル 3A)。

・PROの利用には、施設レベル(例えば、EMRベンダーがPROをサポートしているか、警告に対応するための施設のリソースが利用できるか)、患者レベル(希望言語、自宅でのインターネットアクセスの有無と快適さ、読み書き能力)、社会文化的状況の両方における障壁の初期評価が含まれるべきである(エビデンスレベル 3A)。

・PROの利用支援は、診療所の資源と文化、臨床ニーズと患者集団、PROの特徴(待合室で記入するPROとリモート取得するPROなど)に応じて調整する必要がある(エビデンスレベル 3A)。
  
  
<品質指標としてのPROの利用>

・PROデータの集計は、ケアの質向上の取り組みのための質指標を提供するために考慮されるべきである(エビデンスレベル 5B)。
  
  
<PROの応用可能性と限界>

・有効なソフトウェアの償還、看護師や医師などの専用リソースの割り当て、Oncology Clinic におけるPRO導入プログラムの体系的な評価などが推奨される(エビデンスレベル 5A)。
    
  
特に最後の事項は本邦でePROの普及・実装の障害になっている点かと思います。
  
PROの普及と実装、ePROを用いたモニタリングなど、本邦では未だ未だ課題が山積しておりますが、臨床研究等を通してエビデンスを構築し、臨床現場がメリットを感じてリソース確保と体制構築につながるよう、さらに努力しないといけないと感じております。

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