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データマネジャー養成研修を実施しました!

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共同代表理事の山口です。

臨床試験から信頼できる科学的エビデンスを得るためには、研究の目的に合致した研究デザインと共に、正確かつ精度の高いデータを解析・評価する必要があります。
我々は、2010年代から、臨床データマネジャーを養成するための研修会を実施してきました。

2012-14年:厚労省主催、委託:国立病院機構
2014-15年:国立病院長会議主催、委託:東京大学
 2014年:45大学78名 2015年:34大学46名
2016年度:AMED主催、委託:東京大学・大阪大学
 東京・大阪開催それぞれ50名 計100名
2017年度:AMED主催、取りまとめ:東北大学・大阪大学
2018年度:臨床研究中核病院主催 取りまとめ:大阪大学
 初級(千葉、岡山) 中・上級(大阪)
2019年度:臨床研究中核病院主催 取りまとめ:大阪大学
 DM初級(九州、岡山、名古屋、千葉、岡山) QM研修(東北)
2020年度:臨床研究中核病院主催 取りまとめ:大阪大学
 DM初級(北海道、東北、東京、名古屋、千葉、岡山、九州) 
2021年度:臨床研究中核病院主催 取りまとめ:大阪大学
 DM初級・初中級(北海道、東北、東京、阪大、名古屋、岡山、千葉)

日本に臨床データマネジメントの概念、重要性を紹介したのは大橋靖雄先生(1986年)です。
自分は2008年に東京大学に臨床試験データ管理学寄附講座(臨床データマネジメントに関する講座はおそらく世界初)を大橋先生のご協力のもと立ち上げて以来、臨床研究におけるデータ管理の重要性をまざまざと実感する一方で、学問として体系化されていない(実学であって、アカデミアではどうしても軽視される)ことなどから、学問としての位置づけ、本邦におけるデータマネジャーの地位向上を目指して活動してきました。
当時は、臨床試験においてデータ管理が必要な理由をまとめて教育されていることがなく、海外との認識の差は大きく、また、
臨床データマネジメント = データ入力、データチェック…
という狭義の解釈しかなされていませんでした。
不正確かつ完全でないデータをいかに解析しても、結果はゴミしか出てきません。臨床データマネジャーは、臨床試験のすべてのプロセスに関わるマネージャーであり、統計学、品質管理、臨床の知識を応用した理論と実践を伴う職種であり、また、臨床試験では高い倫理性が求められます。

15年なんとか踏ん張ってきましたが、データマネジメント業務としてまだまだ難しさは存在します。
・重要性に対する認識が薄い
・やるべきことが組織の形態により異なる
・品質基準だけの議論に陥りやすい
・系統的な研究がなされていない
・教育体制が整っていない
最後の2点は関係のみなさまのご尽力もあって、だいぶ改善されてきましたが、
絶対的な誤りはあるが正解と言えるものが無い場面が極めて多く、
まだまだ議論の余地があります。

臨床研究・臨床試験を取り巻く環境は急速に変化しており、加えて、COVID-19の影響は大きいため、順応は必要です。しかしながら、データマネジメント(クオリティマネジメント)の本質は何ら変わっていないと思っています。
目的を理解し(何のためのデータか?)現場を知り、偏りを最小に精度を最大に効率性をもって、臨床の知識、データソース含むインフラの知識を活かし、関連法規とオペレーションを理解し、役割分担とコミュニケーション、ステークホルダーマネジメントに十分留意して、楽しんで業務に邁進して欲しいです。

データマネジメント研究ネットワーク日本臨床試験学会Society for Clinical Data Management (SCDM) 日本支部など、臨床データマネジャーの集まりも大分充実してきました。また、今年度の研修会では、最も重要なステークホルダーである「患者さん」と、臨床研究を実施し協業していく重要性を改めて考えていただければと思い、「KISEKI TRIAL(患者提案型医師主導治験)-「奇跡」をおこし「軌跡」に変える」として、Patient and Public Involvement (PPI) の究極と言える、プロジェクト実行のご経験について、肺がん患者の会ワンステップ代表の長谷川一男先生にご講演いただきました。臨床データマネジメントの意義と重要性を、専門家以外にも十分に認識していただけるよう、これからも頑張りたいと存じます。

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