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臨床試験のお話 ランダム化(ランダム割り付け)について

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共同代表理事の山口です。

前回までブログで、臨床試験の基本は
比較
という話をしました。
なかでも、ランダム化コントロールが最強であります。
  
一方で、今でも医療者などから、
ランダム割り付けは「くじ引き」
とおっしゃるかたがいらっしゃいます。
くじ
とは、あたり、ハズレがあるわけで、
では、臨床試験に参加して、ランダム化されて
新薬候補になったらあたり?
プラセボ、標準薬になったらハズレ?
でしょうか?
もちろん、臨床試験において、
あたり、ハズレがあってはならない、わけです。
  
では、
ランダム化は「でたらめ」?
ということでしょうか?
でたらめ
とは、事実に合わないことや首尾一貫しないことを
でまかせに言ったりすることであり、
いい加減で信用できない様子です。
ランダムとは、
予見可能でないこと、偶然の要素だけで(確率的に)決まること
であり、「でたらめ」ではありません。
  
また、最近ではそのような患者さんは減りましたが、
治療をランダムに決めるなんて、
非倫理的だ
先生がどちらか決めてください
先生がいいと思っているほうにしてください
という人もいらっしゃいます、、、
  
では、
なぜランダム化が許されるのでしょうか?
  
比較する(候補)治療は
健康にいい影響があると信じている
いい影響がある、というエビデンスはない
医者も患者も、どちらの治療法を行ってもいいと考えている
すなわち、
候補と標準がつりあっている
状況であり、これを倫理の用語で
(Clinical) Equipoise
https://medicalexecutivepost.com/2021/04/07/what-is-clinical-equipoise/
と言います。
どちらかが絶対に効くに決まっている
と思っている医療者や患者は、
ランダム化試験には参加すべきではないのです。
  
プラセボなんて絶対に効かない
と思っていらっしゃる患者さんは
たくさんいらっしゃるかもしれませんが、
がん領域ではありませんが、
CAST試験という有名な臨床試験があります。
急性心筋梗塞後に起こる突然死の原因となる
不整脈に対する抗不整脈剤の効果を
プラセボ対照で調べた試験ですが、
抗不整脈薬投与で逆に突然死イベント発生が2.64倍という
結果が得られてしまいました。
このような試験結果は実は散見されています。
  
3回に渡って、臨床試験における比較対照の重要性、
ランダム化の意義について説明させていただきました。
比較対照がない臨床試験結果を見るときは
ぜひご注意いただければと思います。
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