ブログ

臨床試験のお話 RCT、比較対照について

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

共同代表理事の山口です。

共同代表理事の柳澤さんの先週のFBやブログで「#RCT 大全」が紹介され、
RCT(ランダム化臨床試験)の重要性が議論されていました。
標準治療の確立のためなど、検証的な目的で行われる臨床試験は、
通常RCTとして実施されます。
  
さて、臨床試験の基本は
比較
です。
何かの効果を調べる場合には、比較が基本であり、
評価したい治療や介入以外は等質(比較可能)な
比較対照(コントロール)を同じように追跡する必要があります。
  
例えば、風邪薬ルルルの効果を調べるために、
川越市の風邪を引いている人を連れてきて、
(ICとって)ルルルを飲んでもらい、
1週間後に治った人が多ければそれで風邪薬は効いたことになるのでしょうか?
  
もちろん、違いますよね。
例えば、風邪であれば、何もしないで寝ていれば1週間後にはほぼ治ってしまうのでしょうし、
そもそも、多くの人が治った、の「多く」と言っている時点で、
ご自分のなかで既に(比較の)基準があるのです。
何かと比較することで、治療や介入の効果を調べることができます。
  
では、比較するのであれば、
その対照(「対象」ではないのでご注意を!)は何でもよいのでしょうか?
そんなことはありません。
比較対照、以下、コントロールと言いますが、
コントロールにはレベルがあります。
  
理想のコントロール
ランダム化コントロール
同時コントロール
既存コントロール
暗黙のコントロール
  
実は、コントロールのレベルによって、
臨床試験で得られる結論がどれだけ妥当かどうかが変わってしまうのです。
  
レベル0:ルルルを飲んだグループが、もしルルルを飲まなかった場合
理想のコントロール
レベル1:参加者をランダムに2つのグループにわけ、
一方はルルルを飲み、もう一方はルルルを飲まない
ランダム化コントロール Randomized Control
  
可能であれば、
ルルルを飲んだ人たちが
ルルルを飲まなかった場合の結果がわかれば(理想のコントロール)、
その人たちにとって、ルルルが本当に効果があるかどうかはわかります。
しかしながら、全員飲んでしまったので、
ドラえもんは漫画の世界でありタイムマシンは未だ開発されておりませんので、
全員が飲まなかった場合の結果はわかりません。
ランダムに(偶然の要素だけで、確率的に)参加者を
飲む・飲まないグループに割り振ることで、
飲む・飲まない以外に関して、平均的に同一のグループが得られ、
理想の比較の状況を作り出し、
ルルルに本当に効果があるかどうか調べることができるのです。
  
ランダム化ができない場合などは、
レベル2:ルルルを飲んだグループとよく似た、ルルルを飲まないグループ
同時コントロール Concurrent Control
レベル3:ルルルを飲んだグループとよく似た、ルルルを飲んでいない過去のグループの記録
既存コントロール Historical Control
などが用いられますが、ランダム化した場合と比べて限界があります。
  
レベル2と3の違い
同時コントロール
・データ収集はこれから
・測定可能な特徴はすべてほぼ同一であることを確認できる一方で、
それ以外の測定不可能あるいは未測定の要因、未知の要因は確認できない
既存コントロール
・既にデータは収集済み
・たまたま過去に記録されていた特徴しかほぼ同一であることを確認できない
  
怪しい民〇療法などは、
レベル4:ルルルを飲んだグループだけでコントロールなし
暗黙のコントロール
すなわち、比較対照がおかれていない結果に基づいていることがほとんどです。
  
なにも治療しなければ症状はよくならない
一方で、なにも治療しなくても自然治癒する患者もいるかもしれない
わけですから、比較対照がないことは問題があります。
もちろん、なにもしなければ症状などは変わらないなどの前提が置ければ、
この比較対照を採用することは可能ですが、そのような状況は稀なことが多いでしょう。
  
  
まとめると、
レベル0から1、、、4に下がるにつれ、
比較の妥当性が崩れ、結論の妥当性が損なわれてしまいます。
  
  
繰り返しになりますが、
比較すること
は臨床試験の基本です。
なかでも、比較の妥当性を担保するためには、ランダム化コントロールが最強なのです。
  
なお、今回は、
ルルルを飲まない
との比較を考えましたが、試験の目的によっては
別の風邪薬
偽薬(プラセボ)
を飲んでもらうなども考えられます。
  
そのあたりは、次回のブログで改めます。
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

コメントを残す

*