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障害年金シリーズ7:傷病手当金と障害年金は同時にもらえるの?

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傷病手当金の支給を受けているときに、障害年金の支給が決定した場合はどうなるのでしょうか?意外にややこしい関係なのでここでまとめておきたいと思います。

傷病手当金とは

簡単に説明すると健康保険に加入している被保険者本人が、私病(労災以外)により働けなくなったときに、健康保険が月給の約3分2を補填してくる支援制度です。

多くのケースでは障害年金よりも傷病手当金のほうが多くなります。
例えば、障害厚生年金3級だと最低でも約58万が保障されています。日割りにするため58万円を360で除すと≒1,611となります。
次に傷病手当金ですが、標準報酬月額が10万円の人が日割りでもらえる額は 100,000x2/3÷30≒2,222なります。
上記の例を見てもらえば、傷病手当金のほうが障害年金よりも多くなるケースが多いことがわかると思います。

傷病手当金と障害基礎年金

傷病手当金と障害基礎年金を同時に受けることができるときは、両方満額で受給できます。
傷病手当金は月給の約3分の2を30で除した額が1日あたりもらえる額になります。障害基礎年金は年金額を360で除した額が1日あたりもらえる額になります。
標準報酬月額が38万円、障害基礎年金額が780,000円だとすると計算式は次にようになります。

380,000X2/3÷30         約8500円になります。
780,000÷360               約2,100円になります。

図解すると次のとおりです。
傷病手当金と障害基礎年金をすべて受け取るれるので、日額10,600円が支給される計算になります(実際の支給は月単位です)。
ところが、障害厚生年金になるとややこしくなります。

傷病手当金と障害厚生年金

傷病手当金が支給されているときに障害厚生年金が支給される場合は、障害年金の日額分(障害厚生年金又は障害基礎年金+障害厚生年金の日額分)だけ、傷病手当金が支給停止になります。図解すると次のとおりです。

傷病手当金と障害厚生年金3級

傷病手当金8,500円が支給されているときに、障害厚生年金1,600円が支給開始されると、傷病手当金8,500円のうち1,600円分が障害厚生年金から支給され、傷病手当金1,600円が支給停止になります。

傷病手当金と障害基礎年金+障害厚生年金

傷病手当金が8500円支給されているときに、障害基礎年金と障害厚生年金が支給されると、傷病手当金8,500円のうち障害基礎年金+障害厚生年金の合計額5,500円が優先して支給され、傷病手当金のうち5,500円が支給停止になりますこのケースでは障害基礎年金も含めた障害年金の合計額が併給調整の対象となります。ここはややこしいです。

傷病手当金より障害年金のほうが多いケース

傷病手当金が4,000円で障害基礎年金+障害厚生年金が5,000円だった場合は、傷病手当金4000円が全額支給停止になり、障害基礎年金+障害厚生年金5,000円が全額支給されます。しかし、実際は傷病手当金額より障害年金額のほうが多くなるのはかなり珍しいパターンだと思います。

障害年金が遡及支給されるケース

障害年金が遡って支給される場合は注意が必要です。
障害年金は障害認定日に障害状態に該当していれば、障害認定日から5年以内であれば遡って請求することができます。
下図のとおりです。

H27年10月に認定日の遡及請求が認められた場合、H24年5月から障害年金が支給されることになります。この遡及期間に傷病手当金を受け取っていた場合、本来なら支給停止されていた傷病手当金を健康保険の保険者に返さなければなりません。支給停止合計が高額になる場合もあるので、障害年金が初回振込時に遡及期間の分がまとめて振り込まれるので、使ってしまわずに健康保険の保険者に返却するのを忘れないようにしましょう。

傷病手当金を受給しているときに障害年金は請求していいの?

傷病手当金と障害年金は、障害基礎年金のみ受給している場合を除き、傷病手当金が支給停止になることを説明してきました。では、実際に傷病手当金を受給しているときに、障害年金を請求して傷病手当金が支給停止になったら、受給者は損をすることになるのでしょうか?

結論を言えば、障害年金受給により傷病手当金が支給停止になり、受給者が損をすることはありません。なぜなら、傷病手当金には支給開始日から1年6ヶ月という期間がありますが、障害年金に期間はないからです(症状が軽くなり支給停止になることはあります)。
傷病手当金受給中でも、初診日から1年6ヶ月が経過していてい、障害年金の障害状態に該当していれば、障害年金の請求はするべきです。もちろん、傷病手当金をもらっているからといって、障害年金受給の可否に影響を与えることもありません。障害状態でいえば、傷病手当金より障害年金のほうが審査が厳しく受給へのハードルは高いです。それに、障害年金のほうが請求から支給が開始されるまで期間がかかる(請求受理後3〜4ヶ月・準備等を含めると半年ぐらい)ので、傷病手当金受給期間でも障害状態に該当していれば、障害年金を請求しましょう。

傷病手当金の申請時期には気をつけよう

しかし、自分の闘病生活の中での傷病手当金の使うタイミングにはよく考えてからするべきです。なぜなら、傷病手当金は支給開始された日から1年6ヶ月後にはもらえなくなります。1年6ヶ月の間に出勤していて給与をもらい、傷病手当金が支給停止されていた時期も含めて1年6ヶ月です。
極端な例をあげれば、1日でも傷病手当金をもらってしまったら、その後1年6ヶ月間出勤していたら傷病手当金の受給期間は終了してしまいます。その後、再発して抗がん剤治療をするため長期療養が必要となっても傷病手当金をもらうことはできません。そのため、長期療養が必要がない場合は傷病手当金を使わずに残しておくということも十分選択肢となります。手術で根治的治療をする場合で会社を休む期間が1月だとすれば、できれば、傷病手当金を使わずに有給休暇などでカバーできるのであれば、傷病手当金を温存しておくことも一つの作戦だと思います。

まとめ

傷病手当金と障害年金の関係に解説してきました。障害基礎年金の場合は傷病手当金と両方満額もらえますが、障害厚生年金の場合は、障害基礎年金の金額分も含めて傷病手当金が支給停止されるので注意しましょう。
傷病手当金受給中に障害厚生年金が支給される場合、障害厚生年金支給支給開始月まで遡って傷病手当金を保険者に返還する必要がでてくるので注意しましょう。

それと、傷病手当金をもらう時期は、長期療養が必要と思われるタイミングで使ったほうが有効的です。障害年金は受給へのハードルが高く必ずもらえるものでありません。それに比べ、傷病手当金は受給へのハードルは高くなく、申請すればかなりの確率でもらえます。そういった意味では長期療養の際、傷病手当金がもらえることはとても安心感につながります。傷病手当金を使うタイミングには長期的視野も含めて検討したほうがいいでしょう。

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