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臨床試験のお話 プラグマティック試験について

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共同代表理事の山口です。
  
みなさまは
“Pragmatic Trials”(プラグマティック試験)
って聞いたことがありますでしょうか?
  
臨床試験を目的と実施状況に基づき分類した場合、
“Pragmatic trials” に相反する “Explanatory trials”(説明的試験)とは、
介入法の作用機序などを解明する目的で実施条件をある程度厳しく設定して実施する試験、
“Pragmatic trials”(実務的試験)とは、
実施条件をゆるく設定し日常診療に近い状況で介入法を評価するために実施する試験、
として説明がなされています。
  
近年、医療データベースや疾患登録システム(レジストリ)など、
様々なリソースが利用可能となった背景から、
厳格に管理された状況下でのランダム化試験で得られるエビデンスに加えて、
日常臨床下における様々な治療法や介入法の有効性や安全性を検討する
“Pragmatic Trials” が脚光を浴びています。
本邦では、臨床試験登録制度にともなう教育上の対応から、2005年に、
大学病院医療情報ネットワーク UMIN (University Hospital Medical Information Network) の
臨床試験登録システムの解説にてこれらの用語が使用されたのが(おそらく)初めてと思われます。
  
がん領域ですと
ATLAS (Adjuvant Tamoxifen:Longer Against Shorter) 試験という、
早期乳がんへのタモキシフェン補助療法を10年まで延長した場合の、
さらなる効果を評価することを目的としたランダム化試験が有名です。
“Explanatory” な臨床試験であれば、参加規準は例えば、
乳がんであることが組織学的に確認され治癒切除された、
エストロゲン受容体(ER)陽性、年齢xx歳、、、
となるのでしょうが、
本試験は “Pragmatic” な要素が多く、
5年間タモキシフェンを服用し、続けるかやめるべきか決定できない
(医師および)乳がん術後患者
という規準になっています。
  
臨床試験がより “Pragmatic” かどうかは、以下が判断根拠の一つとされています。
・参加者:日常臨床における患者とどの程度類似しているか
・セッティング:日常臨床現場とどの程度乖離があるか
・測定と観察:日常診療と比してどの程度密に余計にデータを測定し患者のフォローアップをしなければならないか
・アウトカム(臨床評価項目):患者にとってどれくらい適切で意味があるものか
などです。
  
重要な点は、
臨床試験は、完全に “Explanatory” あるいは “Pragmatic” に
分類はできず、目的に応じてそのバランスが変わってきます。
より日常臨床に近いという “Pragmatic” な要素が考慮され、
患者さんが求めている情報が
正確にかつタイムリーに発出されるような臨床試験・臨床研究が、
今後積極的にかつ効率的に計画・実施されることを切に望みます。
  
  

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