ブログ

障害年金シリーズ1:がんと障害年金

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

こんばんは、キャンサーベネフィッツの清水です。
今日のブログはがんと障害年金について書こうと思います。

65歳以下の方で、厚生年金に加入している人、または国民年金年金の保険料を払っている方は、障害年金における障害状態になれば障害年金を請求する権利があります。でも、がんの場合、障害状態を満たしているにも関わらず、申請手続きをしていない人がとても多いというのが、多くのがん患者を見てきた私の感想です。

がんでも障害年金はもらえます

そもそも、がんで障害年金がもらえるということを知らない人が多いです。

仮に知っていたとしても、請求の方法がわからなかったり、体の具合が悪くて手続き出来ていないなどの理由でもらってない場合が多々あります。

現在の障害年金の受給者数

厚生年金保険・国民年金事業統計によると令和2年4月における障害年金(基礎年金と厚生年金の合計)の受給者数が約216万人障害基礎年金のみの受給者数が約163万人となっております。障害基礎年金のみ受給している割合は約75%とかなり高くなっております。がんで障害年金を受給している人は、厚生年金加入中に初診日がある人が障害年金の他の傷病に比べると多いので、障害厚生年金の受給者割合がもっと多います。

少なすぎるがんでの障害年金受給者

傷病別の統計での障害年金受給者割合においても平成26年年金制度基礎調査(障害年金受給者実態調査)おいて、「精神障害 」31.0%、「知的障害 」23.2% で全体の5割以上となっているが、がんを含む「新生物(腫瘍のことであり、悪性と良性のものがある)」の割合は全体のわずか1.1% となっています。がんであっても局所の障害により別の傷病名で障害年金が認められているケースがあるとしても、この数字は低すぎます。

障害年金は老後にもらう老齢年金や被保険者が死亡したときに遺族がもらう遺族年金と同じ公的年金です。年金制度に加入していて、障害状態になったのであれば、障害年金をもらう権利があります。それはがん患者も同じであり、がんで亡くなる人が多い現状において、がん患者はもっと障害年金年金をもらうべきです。

がんの統計データ

ここからは、がんの基本的な統計データとみていきたいと思います。

生涯でがんに罹患する確率

国立がん研究センターがん情報サービスの2017年データによると生涯でがんに罹患する確率は男性65.5%(2人1人)、女性50.2%(2人1人)となっています。

出典:国立がん研究センターがん情報サービス

罹患数が多い部位は

国立がん研究センターがん情報サービスより、2017年の罹患数が多い部位は次のようになっています。

出典:国立がん研究センターがん情報サービス

がん(悪性腫瘍)で亡くなる人の割合

出典:平成30年(2018年)人口動態統計月報年計(概数)の概況

 

 

平成30年(2018年)人口動態統計月報年計(概数)の概況によると、日本人の死因の内訳は次にのようになっており、がん(悪性新生物)が27.4%と一番多くなっています。
2018年にがんで死亡した人は373,584人(男性218,625人 女性154,959人)です。

死亡数が多い部位と部位別死亡数

国立がん研究センターがん情報サービスの調べでは、2018年の死亡数が多い部位は次のようになっています。

出典:国立がん研究センターがん情報サービス

出典:国立がん研究センターがん情報サービス

年齢階級別にみたがん(悪性腫瘍)で亡くなる人の割合

平成30年(2018年)人口動態統計月報年計(概数)の概況によると、年齢階級別にみたがん(悪性腫瘍)で亡くなる人の割合においてもがんはすべての年代において多いことがわかります。

出典:平成30年(2018年)人口動態統計月報年計(概数)の概況

がんにより亡くなる方は多いけど障害年金を受給している人が少ないのはなぜ?

ここまで統計データを見てきましたが、障害年金が受給できる年齢でがんに罹患し、亡くなられる方が多い中で、なぜがんにより障害年金を受給している人がこんなにも少ないのか?

これは、本来ならがんにより障害年金をもらうべき人がもらっていないことを意味しています。
障害年金は請求して初めて支給されるものです。認定基準を満たす障害状態であっても申請しない限り支給されません。

がんによる障害年金受給割合が低い理由

  • がん患者に障害年金の制度が認知されていない
  • 働いていると支給されないと思っている
  • 認定基準が分かりづらい
  • がんを診療する医師が障害年金の診断書を書くことに慣れていない
  • 社会保険労務士もがんでの障害年金申請のポイントを知らない
  • がん患者が認定基準を満たしても、症状の悪化により請求する気力と体力がない

上記のことは、わたし自身のがん患者としての経験と、患者会でたくさんのがん患者の方と接してきて、障害年金申請手続きのアドバイスをしてきて感じたものです。

がんで障害年金を請求できることを知らない患者の方が多いです。担当する医師の障害年金の認知度もかなり診療科により差があるのが現実です。精神障害や知的障害を担当する医師は、障害年金の請求者が多いので障害年金の診断書の書き方を熟知している先生が多いですが、がんを担当する腫瘍内科等の医師は、障害年金の診断書の書き方の認知度は低いと感じます。
障害年金の審査は日本年金機構の東京にある「障害年金センター」にて、約300名の認定医がそれぞれの専門分野の傷病を書類のみでおこないます。その書類の中で一番重要なのが、医師の診断書になります。診断書の内容が障害年金の受給の可否に大きな影響を与えます。
私が自分自身の障害年金の請求手続きをしたとき、主治医が、がんを担当する呼吸器内科の教授でしたが、がんで障害年金の診断書を書くのが初めてとのことで、書き方を違う診療科の同僚に聞いたと言っていました。このことは、がんで障害年金を請求する患者が、いかに少ないかを物語っていると思います。

いま、がん治療においては、治療と緩和ケアを早い段階から同時におこなう病院が増えています。緩和ケアを早期から導入することにより、QOL(Quality Of Life:生活の質) がよくなると言われているからです。「緩和ケア=末期がん」という考えはもはや過去のものです。

がん患者の QOL には当然、仕事やお金のことも関係しています。緩和ケアを早期実施することが、がん治療の常識となりつつあることと同じように、仕事やお金などの悩みもがん患者が気軽に相談できる仕組みが求めれていると思います。そのことにより、がん患者の不安や悩みを少しでも解消できように私もお手伝いができればと思います。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

コメントを残す

*